カトリック神戸中央教会

Kobe Central

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赤波江 豊神父
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黙想のヒント 待降節第1主日

「太陽と月と星に徴が現れる。地上では海がどよめき荒れ狂うので、諸国の民は、なすすべを知らず、不安に陥る。人々はこの世界に何が起こるのかとおびえ、恐ろしさのあまり気を失うだろう。天体が揺り動かされるからである。」(ルカ21:25~26)

紀元前585年5月28日、当時の小アジア(今のトルコ)でメディア王国とリディア王国が戦争をしていました。
その時、突然太陽が真っ暗になり、両軍の兵士たちは恐怖に怯え、やがて散り散りなって逃げて行き、そのまま戦争が終わったという記録があるそうです。
どうやらこれは皆既日食だったらしい。
今の私たちだったら喜んで見に行きますが、皆既日食のことを知らなかった当時の人々にとって、これは神の罰かこの世が終わったかのような錯覚に陥ったことでしょう。

しかし古代ギリシアの哲学者タレスは既にそのことを予測していたと言われています。
皆既日食を見たら人生変わると言う人もいます。
確かに地震や戦争、飢餓疫病はいつの時代にも人々を苦しめましたが、それを乗り越えて人々は新しい時代と新しい生活を迎え、お互いの命をつないできたのでした。

1995年の阪神淡路大震災のとき、私はローマで勉強していましたが、震災の数日後大学であるアフリカ出身の司祭が私に驚いた顔で、(恐らく彼はテレビで被災地神戸の人たちが談笑している光景を見たのでしょう)「どうして神戸の人たちはこんな大変な事態になっているのに笑っているのか。私には信じられない。」と言うのです。
日本人は地震災害のときなど、よく笑顔を見せます。それは、「過ぎたことをいつまでも悲しんでも仕方がない。これからはお互い笑顔でこの困難を乗り越えていこう」という思いでお互い笑顔を交わすのですが、外国の人からはこの日本人の笑顔が不気味に思えるらしいです。

「そのとき、人の子が大いなる力と栄光を帯びて雲に乗って来るのを、人々は見る。このようなことが起こり始めたら頭を上げなさい。あなたがたの解放の時が近いからだ。」(ルカ21:27~28)

解放の訪れに対して私たちの頭を上げる力となってくれるもの、それはまさに災害など困難なときに私たちがお互いに交わす「笑顔で困難を乗り越えよう」という思いなのです。
長く続く新型コロナウイルス、その終息を願う気持ちは、イスラエルが何百年も救い主を待ち望んでいた思いとは比べ物にならないかもしれませんが、解放を願う気持ちは同じです。

昔坂本九という歌手が「上を向いて歩こう」と歌って当時の国民に勇気と希望を与えてくれたように、「笑顔で困難を乗り越えよう」という思いがいつも私たちも頭を上げ続けてくれますように。

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