カトリック神戸中央教会

Kobe Central

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赤波江 豊神父
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黙想のヒント 年間第6主日A年

「人間の前には、生と死が置かれている。望んで選んだ道が、彼に与えられる。」(シラ書15章17節)

実に単純な、そして真実な教えです。望んで選んだ方が自分のものになるのです。生と死というと、天国と地獄を連想される方もいるかも知れません。
最終的にはそうかも知れませんが、要するに自分を生かす道と自分を滅ぼす道、それは一人一人の選択にかかっているということです。
単純に言えば、喜び感謝で生きても、不平不満で生きても同じ一日。
同じ一日を生きるならどちらを選ぶかということです。そして選んだ方が自分のものになるのです。
イエスはこのことを、空の鳥のように一日一日を神に信頼して生きるように教えました(マタイ6:25~34)が、実は他の宗教でも同じように教えているのです。

例えば、禅には「日々是(これ)好日」という教えがあります。
今日の一日は独立した一日であって、将来に連続しているのではない。毎日毎日が独立して最良の日だというのですね。
今日一日の人生を楽しむのであって、将来に何か報いを期待して生きるのではない。もし将来に何かを期待して懸命に生きているのなら、その先が来ないと納得できない。
しかし今日一日素晴らしい日を送ったら、その日の報いは今日いただく。だから将来に貸しは残さないわけです。
仮に明日が来なかったとしても、今日が最良の日ならそれで十分で思い残すことはない。だから死というものは一日一日の中にある。
そのため禅にはまた「知足」(足るを知る)という言葉もあります。

これは老子の「足るを知る者は富む」という言葉から来ていますが、必要なものは今既に与えられているという意味です。
だから幸せとは将来に何かを願うことではない。将来に幸せを願えば、今が幸せでないことになり、却って毎日ストレスを生む結果となります。
幸せとは今を肯定して味わって生きることであり、自分がどのような境遇に生まれようとも、何か事故に遭遇しようとも、それは何か意味があってのことだから過不足はないと捉えることもできます。というのは、人生は学校であって、全てのことは自分が何かを学び、深めるために与えられたからです。

大事なことは、今日一日の出来事に一喜一憂せず、それをじっくり味わう心の余裕です。そうなるとネガティブ感情も生まれにくく、そのような心の余裕をもつ人は他者の幸せを意識した行動に向かう傾向があり、また人間関係もより豊かになり、反対に意図的に幸せになろうとするとストレスがたまり、幸福感の重要性を感じ、幸福感を得たい意識が高まれば高まるほど、却って孤独感を感じやすいという調査報告もあります。

精神医学者で哲学者のヴィクトール・フランクルは「幸せは決して目標ではないし、目標であってはならない。また目標であることもできない。それは結果にすぎないのである。」と言いました。幸福とは求めて得られるものではなく、結果として与えられるにすぎないと言うのです。生き方や習慣は意志によって獲得することはできますが、幸福はそうはいかない。それは、あくまでも心の状態を言うのであって、それも一時的な快楽状態ではなく、もっと持続した心の平和がその本質なのです。
そのためには、一見して単純に見える毎日の生活をじっくり味わう心の余裕が必要です。
マイナスな出来事も、一日をより良く味わうためのスパイスととらえましょう。
食事を美味しく味わうためには多少のスパイスも必要です。
同じように「ストレスは人パイスである。」(ハンス・セリエ)

このように、一日一日の出来事をじっくり味わう心の余裕があれば、幸せは後からついてきます。

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