カトリック神戸中央教会

Kobe Central

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赤波江 豊神父
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黙想のヒント 年間第7主日

「人にしてもらいたいと思うことを、人にもしなさい」(ルカ6:31)

この言葉は一般に「黄金律」と呼ばれ、数千年にわたって人間の行動規範とされてきましたが、実はイエス以前から同じようなことは言われてきました。
「彼は、自分自身にとって望ましいと思う善を他の人々のために求めた」(紀元前600年頃のエジプトの碑文)
「我々は世間が自分に対してやってほしいと望むように、世間に対して振る舞わなければならない」(アリストテレス)など。
しかし「黄金律」と呼ばれる今日の福音の言葉は分かりやすい反面、少しニュアンスが変えられて解釈されることも多いのです。

こんな寓話があります。昔南の島で原始的な生活をしていた部族にある宣教師が「人にしてもらいたいと思うことを、人にもしなさい」と説教したところ、それを聴いたその部族の村長はいたく感銘を受けたらしく、後日彼はプレゼントを携えて司祭館を訪れました。
そのプレゼントは村長が最も望んでいたものだったのですが、何と彼は6人の妻をその宣教師に贈ろうとしたのでした!
これはあくまでも寓話ですが、同じような例は時々見られます。
例えば、ある人が友人の結婚記念日に非常にきれいな花瓶をプレゼントしたとします。
その友人は非常に嬉しそうに感謝してくれました。
さてその人は、その年の教会のバザーでその花瓶が出品されているのを見かけました。
その時のこの人の気持ちを想像してみましょう。

その人はこう考えたかも知れません。「人がせっかくプレゼントした花瓶をバザーに出すとは何事か!あの嬉しそうな顔は嘘だったのか!もうこんな人にプレゼントなんかするものか!」
実は、この人は自分の好きなものを相手に贈って、相手を束縛しているのですね。
この人は無意識の内にこう思っていたかも知れません。
「あなたはこの花瓶をいつまでも大切にして、応接間の中央に置いて磨き、いつも綺麗な花を活けて、わたしが来たらいつも感謝しなければならない」などと。
しかし友人は元々花瓶には興味がなかったのかも知れない。でも友人は贈ってくれた相手の心を喜んでくれたのですね。

「賢明な人は、その愛する人からの贈り物より、贈り物をくれる人の愛を重んじる」(トマス・ア・ケンピス、古典的名著『キリストに倣いて』の著者で修道者)ですから何かプレゼントするときには、「何も当てにしないで」(ルカ6:35)それを処分する自由、バザーに出す自由、他の人にあげる自由も同時に与えなければならないのですね。

今日の福音書は、別に自分の好きなものを相手にプレゼントしなさいと命じているのではなく、相手の望みを相手の立場に立って判断し、相手の目を通して世界を見てくださいということなのですね。
そのことで他の人が必要とすることに目が向き、人への思いやりも深まり、そのことがやがて自分の幸せへとつながっていくのです。
ですから、中心はいつも自分ではなく、相手でなければならないのです。
即ち、恵みが欲しければ恵みを蒔くこと、幸せになりたければ人々の幸せを願うことです。

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